第二章:明度差の仕組み  一ノ巻:色の縮小
 第一章で最も単純なモノクロによるドットの基礎を解説したので、この第二章ではその間に
あるもの”中間色”を行きたい。色味と彩度はひとまず棚上げしてまずは明度からである。

 下のサンプルはグレーの背景に同じ大きさの白い四角を並べ、そのうちのひとつだけを黒で
塗った物である。黒い四角の方が他の白い四角に比べて小さく見えないだろうか? 
同じ大きさの物でも黒は白よりも小さく見えるように感じる。右の十字も同じ理屈で右下の
暗い色の方が左上の白単色よりも若干細く見える。明度差による色の縮小である。

 科学的なことは疎いので解説できないが光の反射量そのものの違いが影響しているの
だと思う。白は光を一番多く反射し、黒は一番多く吸収してしまうというアレだ。ドットは発光
しているので余計にそう感じるのだろう。なにせ最初から黒い部分は光ってないのだから。

黒い方が小さく見える グラデでも同じ。暗い色の方が若干細く見える。

第二章:明度差の仕組み  二ノ巻:色の境界
 膨張縮小の次は色の境界について記しておきたい。まずは下のサンプルを見て欲しい。
グレー地に同じ大きさの四角を配置したものだ。右の縦2つは同じ明度、左側はそれぞれ
白と黒を置いてみた。上段の配色の方が色の境界が曖昧に見えるのが分かると思う。
明度による境界の見え方の違い

 上段は2色の明度差が小さく、下段は大きい。この例から明度差が大きい方が色の境界を
より強く感じることが分かる。人は色の差から物の形を判断するので、隣り合う色の差(明度・
彩度・色相等)が大きければ大きいほど境界を強く感じる。物のエッジが立つのである。
白地に黒文字が一番読みやすいのはそれが一番色差が大きい組み合わせだからだ。
逆に「となりのトトロ」ではキャラと背景をなじませるために、人物の主線を黒ではなく茶色で
処理していたりする。キャラCGなどで見られる主線の色トレスもこの原理の応用である。



 と言うことは、第一章でやったモノクロドットは一番エッジが立っていることになる。エッジが
一番立っているのだからガビガビ感も一番感じる訳だ。そこでこの色差の原理を利用して
ガビガビ感(”ジャギー”または”ジャギ”と呼ぶ)を軽減する方法が有名な「ジャギ消し」だ。
百聞は一見にしかず、とにかくサンプルを見ていただこう(サンプル左は2倍拡大)。

ジャギ消しあれこれ ジャギ消し部分拡大

 色差が離れている部分に、その間を補完するドットを置くことによってなじませている訳だ。
第一章で「イメージではこう言う斜線」という部分があったが、まさにそこを埋めて擬似的に
イメージに近づける必殺の手法だと言えよう。ドットの限界をドットで超えるのである。

 0番の円を段階的にジャギ消しした物である(番号はジャギ消しのレベルと言えるもの)。
”1”が1色だけ使った単純な消し方で、”2”は2色使った16色キャラなどで使われる消し方。
”3”は主線の色修正までやったPhotoshopのアンチエイリアス処理に近い豪華な消し方だ。
色数や手間の関係でレベル3まで消すことは稀である。実寸でどう見えるかはサンプルを
1/2に縮小すれば分かるので見て欲しい。(縮小時の補完処理を切るのを忘れずに)


 だが、ジャギ消しはあくまでも「ドットのジャギ感を軽減して、本来のイメージに近づける」
ことが目的なので、線のイメージから外れた部分までしつこくかけるのは本末転倒であり
折角吟味したドットを台無しにしてしまうので、解像度が低い環境での乱用は禁物である。
下のサンプルがその駄目な例の典型だ。(サンプルは4倍拡大)

こう言うのはやりすぎである

 笑い話ではなく、本当にこういう消し方を平気でしてくれる人も中にはいるので、チーム内で
修正担当になった場合は覚悟と注意が必要だ。折角エッジが立っている直線まで処理を
加えるのは全くの無意味なことである。ジャギ消しとは本来隠し味であり、目立つ程使うのは
避けるべきである。納期直前にこんな消し方をして提出したら修正担当から怒りの鉄拳
飛んでくるかもしれない。仮に飛んで来なくても今度は仕事が来なくなるだろう…。
過ぎたるは及ばざるが如し、ドットでもメリハリが大切なのである。



 ジャギ消しと同じ理屈で線の末端を細く見せることもできる。先程解説した色差の原理を
応用して背景色になじませて行く方法だ。サンプルを見て欲しい(サンプルは2倍拡大)。

末端の処理例 末端の処理例 その応用。

 黒が一番ドットが小さく見えるのは変らないが、背景色との色差は最大なので目立って
しまう。そこで背景色と色差を減らすよう、ジャギ消しの応用でドットを置くと先端を鋭く見せる
ことができる。サンプル中央の白黒反転した物の方が分かりやすいかもしれない。サンプル
右端はジャギ消しと末端処理を使って同色で適当に打った顔である。髪の先端や目、頬の
線に処理を使っている。キャラのドットを打つ場合は特に先端に気を使う必要がある。



 第二章では明度差とそれを使った処理を解説した。復習も兼ねて各自モノクロ表現で色々な
物を描くことに挑戦して欲しい。何種類か明度差を変えた背景色を用意してそこに三角形や
星型を描いて処理をしてみるのも良い練習になる。明度差の違いによる色のなじみ具合を
探りながら書いてみて貰いたい。色は上のサンプルをセーブして使うのが手っ取り早い。
三角形なぞ楽勝というという方は扇型や円を書いてみるのも良いと思う。小さい円を綺麗に
見せるのは割りに難しい部類に入るので苦労するかもしれないが頑張ってみて欲しい。
10ドット程度の英字フォントを書いてみるのも面白いがフォントはかなり手強いので御注意を。


 以上で第二章は終了。第三章では色相と彩度についての解説を予定。お待ちあれ。

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