第一章:黒白の吟味 一ノ巻:それは点の集合体 |
第一章ではドット絵の基礎中の基礎、ドットの説明からその集合である直線、さらに直線の 集合である曲線の解説までをしてみたい。いきなりグラデがどうのジャギ消しがこうのと 言われても身に付かないので、まずはモノクロで基礎的なドットの性質の理解をしつつ、使用 するツールに慣れて貰いたい。多色やジャギ消しはまだ先である。 まず、パレットで(R:0.G:0.B:0)と(R:255.G:255.B:255)という数値の”黒”と”白”を作り 背景を白で塗りつぶしてからペンツールで黒点を打って欲しい(便宜上、画面は4倍で表示)。 四角い黒点、これがドットである。解像度が高い場合1ドットは見えにくいかもしれないので、 ツールの拡大かルーペを使って確認欲しい。下のサンプルのような物も拡大すれば同じ点の 集合体であることが分かる。各自アイコンやGIFなど、色々な物を拡大して見て欲しい。 当たり前のように感じるかも知れないが、実は複雑な絵を描き始めるとこの点の集合体という 部分がネックにもなり、また効果的な見せ方にもなってくるのでドットと言う物はこういう四角い 桝目でしかないのだと言うことを身体の中に通して納得して貰いたい。ドット絵ではこれ以下の 点はどうやっても表現できないのだから…。 |
第一章:黒白の吟味 二ノ巻:直線の妙(A地点からB地点まで) |
ドットが単なる四角い桝目であることを認識して頂いたところで、次は点の集合で最も単純な 直線を説明したい。先ほどの点を打った絵に垂直と水平の線を引いてみよう。太さは変らない。 次に線が交わっている部分から45度の傾きを持つ直線を引いてみよう。どう見えるだろう。 下のサンプルのように同じドットで線を引いても斜め線の場合は細く見える。何故だろうか? 右のサンプルでは更に拡大してみた。イメージ的には赤い部分まで無ければならないのだが 欠けているために細くガタついて見えるのである。これが”一ノ巻”で触れた「ドットとは四角い 桝目でしかない」ということである。逆に言うと45度の線は従来の線よりも細く見えるので、 錯覚を利用して1ドット以下の描画も可能だということになる。この辺の解説は色の膨張縮小に 関係してくるので後の章に譲りたいと思う。(ちなみにタイル技法が45度の線の集合になって いるのはそれが一番ドットが小さく見えて周りのドットとなじむからである) また、線の角度によってはドットの特性で綺麗に線として認識できない場合がある。 具体的には下のサンプルを見ていただこう。90度までの線を直線機能で任意に引いた。 45度と90度以外はガタガタでありこのサイズでは非常に見苦しい。だが実際ドット絵の 直線などこんな物である。これ以下の点が無いのだから仕方が無い。ドットの限界である。 それを踏まえた上で次のサンプルを見て欲しい。なお、ドットの大きさは同じである。 こっちの方が直線に見える。一体何故だろうか? 秘密はドットの構成方法にある。 拡大した方でドットの並びを観察して欲しい。(振られている数字はドットの数を表している) どの直線も等しいドット数で構成されているのがお分かりいただけるだろうか。45度以外の 直線でも等しいドット数で並べて行けば綺麗な表現は可能なのだ。当然3並びも使える。 これは曲線を美しく見せるためにも不可欠であり、非常に大切な基本なので覚えて欲しい。 ドット絵の極意の一つはこの部分にあるといっても過言ではない。 だが、世の中そうは上手く行かない場合も多い、均等並びの直線ではどうしても原画の線を 表現できない場合が必ず出てくる。そう言う場合は慌てず並びを少し弄ってやるのである。 後にジャギ消しが欲しいが直線には見える。垂直水平に近い線は4.4.3.4.4.3という並びで 45度に近い線は1.1.2.1.1.2という並びである。4.4.3並びのような多めのドットで構成されている 線は長い直線を引く時に効果を発揮し、1.1.2並びは45度と2.2.2並びの中間が必要な時に 威力を発揮する。弄ったと言っても規則性はあるので均等並びの応用と言えるだろう。 また、この手の並びでは線の末端にどのドットの並びが来るかで線の印象が変るので 細心の注意が必要である。こう言う部分をおざなりにすると見栄えの悪さが雪ダルマ式に 重なって最終的な出来に影響してくるので注意して欲しい。たかが単色の直線と言えども 基本をおろそかにしていると永久に上手くならないのである。 |
第一章:黒白の吟味 三ノ巻:そして曲線へ |
直線表現がドット絵のイロハのイの字の1画目だとすると、単色での曲線は2画目である。 曲線と言っても直線と基本は同じである。下のサンプルを見て欲しい。 曲線の極み、円である。円の拡大図を見てみると3.2.1.1.1.1.2.3と1ドットずつ数が減っている。 つまり徐々にドット数を減らして行くと滑らかな曲線になるのである。直線が均等なドット数の 並びで表現するのが美しいのと同じように美しい曲線を描くには規則性が大事な要素なのだ。 ドットでの曲線は複数の直線で構成されている物と考えて貰った方が分かりやすいと思う。 これらの規則性と様々な直線の組み合わせで美しく曲線を表現するのだが、直線が描ければ 曲線はその応用である。以上のことを踏まえて描けば必ず道は開けるので頑張って欲しい。 この時点でどうしても拾えない線が出てきた時に初めてジャギ消しをするのが望ましい形だ。 最初からジャギ消しに頼ると同人ソフトで良く見るヌルいドット絵にしかならないので、基礎を 習得する意味でもまずは美しい線を引けるよう、ドットを煮詰める考え方を身に付けて欲しい。 円と様々な角度の直線を書きつつ動きも習得出来る方法として、アナログ時計を書いてみると いう練習方法がある。最初から多色で打つのは無理なので、まずは32*32程度の画面に 単色で円に短針だけの時計から始めてみよう。30度刻みの直線を90度まで作り、それをコピー して上下左右反転して合成すれば完成である。30度刻みと言っても結構綺麗に回る物なので、 綺麗に回らない場合は線の表現に問題があると言う事になる。1ドットの持つ意味をじっくり吟味 して打って貰いたい。無意味なドットを置く場所は無いのである。それと絵の確認をする場合は 必ずルーペではなく実寸で確認する癖を付けて欲しい。ルーペは主に細修正や確認などに使い、 出来上がりを常に実寸で見ていないと、部分的には凝ってるけど全体のバランスが悪い物が 出来てしまうからだ。一度癖を付けてしまえば800*600程度の解像度でも1ドットの動きが分かる ようになるので、今は苦しくともルーペは補助として我慢して欲しい。完成時の環境でドットを 吟味することが大切なのである(解像度が1024*768以上なら2倍拡大で確認するのが良い)。
「こんなの楽勝だぜぇ」と余裕のある人はもっと割りを細かくしてみても良いし、さらに腕に自身の ある人はこれでレーダーでも作ってみると面白いだろう。8色もあればグリーンディスプレイの表現 には十分なので効果的な描き方を実践して貰いたい。32*32の8色でも相当凝ることが出来る のが分かると思う。ドッターとは誰も気付かない部分にまで無駄に凝る職癖を持つものなのだ。 ちなみに松本レーダーを描いても可。楽しみは無限だ。 これにて第一章は終了。続く第二章ではグレースケール表現を絡めたドット術に触れたい。 続く第二章の掲載を待たれよ。 |